国番号87の着信はどこから?衛星電話を悪用した国際詐欺の真相と対処法
スマートフォンの着信履歴に見慣れない「+87」や「+870」から始まる番号が残り、首をかしげた経験を持つ方が急増しています。わずか1回のコールで切れる「ワン切り」であることが多く、海外に知人がいないにもかかわらず深夜や早朝に突然着信が入るケースが目立ちます。
見覚えがないからと放置する分には問題ありませんが、最も危険なのは「仕事の緊急連絡かもしれない」「海外旅行中の知人からでは」と不安に駆られて不用意に折り返してしまう行為です。この番号の背後には、国際的な通信インフラの隙間を突いた悪質な詐欺グループの巧妙な手口が潜んでいます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:国番号「+870」は特定の国ではなく、外洋船舶や被災地などで使われる「インマルサット衛星電話」に割り当てられた特殊通信コードである。
- 要点2:不在着信に折り返すと、1分あたり数百円から数千円に及ぶ超高額な国際通話料が発生し、その一部が詐欺グループにキックバックされる国際収益分配詐欺(IRSF)の標的となる。
- 要点3:着信に出るだけなら原則として通話料は請求されないが、折り返しは絶対に厳禁。携帯キャリア各社の「国際電話発着信規制」やスマホ本体の着信拒否機能を設定することが最善の防御策となる。
【真相解明】国番号87はどこの国?インマルサット衛星電話が示す正体
電話番号の冒頭に付く国番号(国際電話番号)は、国際電気通信連合(ITU)の取り決めによって国や地域ごとに割り振られています。例えば日本は「+81」、アメリカやカナダは「+1」、中国は「+86」です。では「+87」あるいは「+870」はどこの国に割り当てられているのでしょうか。
結論から言うと、「87」は地理的な特定の国家を示す番号ではありません。これはITUが特殊な国際ネットワーク向けに指定したコードであり、代表的なものが「+870」に割り当てられているインマルサット衛星電話(Inmarsat)の単一ネットワークアクセスコード(SNAC)です。
かつては太平洋地域(872)やインド洋地域(873)など海域ごとにコードが細分化されていましたが、利便性向上のため「+870」に一本化されました。本来インマルサット衛星電話は、地上の通信アンテナが届かない外洋を航行する大型船舶、航空機、あるいは砂漠地帯の観測隊、大規模災害発生時の緊急人道支援現場などで人命を支えるために運用されている高機能通信システムです。
地上設備を経由せず、高度約3万6000キロメートルの静止軌道上にある人工衛星と直接電波をやり取りする仕組み上、その通信コストは一般的な地上の携帯電話ネットワークとは比較にならないほど高く設定されています。悪意あるサイバー犯罪組織は、この「法外に高い正規の通信料体系」を詐欺の道具として悪用しているのです。

なぜ折り返すと危険なのか?国際ワン切り詐欺の手口と通話料金の真相
「+870」からの不審な着信の多くは、着信音を1〜2回だけ鳴らして意図的に切断する国際ワン切り詐欺と呼ばれる手口です。彼らの狙いは電話に出させることではなく、被害者に「掛け直させる(コールバックさせる)」ことにあります。
この犯罪の根底にあるのは、通信業界で「IRSF(International Revenue Share Fraud:国際収益分配詐欺)」と呼ばれる不正な資金循環構造です。詐欺グループは、政情不安な小国や特殊な衛星通信事業者、あるいは一部の悪質な電話転送事業者と結託し、あらかじめ高額な課金が発生する特別番号(プレミアムレート番号に類する回線)を契約します。
日本の利用者がその番号へうっかり折り返し発信を行うと、日本の通信キャリアから海外の接続事業者へ高額な通信接続料が支払われます。そして、その通信料の一定割合が「キックバック」として詐欺グループの口座へと不正に還元される仕組みです。
さらに狡猾なのは、折り返し電話をかけた際の演出です。電話がつながると、以下のような偽装工作で利用者の通話をできるだけ長引かせようとします。
- 受話器の向こうから「プルルル…」と偽の呼び出し音(リングバックトーン)を流し続け、まだ呼び出し中だと錯覚させる
- 「こちらは〇〇サポートセンターです。オペレーターにおつなぎしますのでこのままお待ちください」といった自動音声ガイダンスを日本語や英語で流す
- 意味不明な外国語の録音テープや不気味な雑音を延々と流し、何が起きているのか判断を迷わせる
利用者が「おかしいな」と気付いて切断するまでの数分間、秒単位で高額な通話料金がメーターのように加算され続けます。月々の携帯電話料金の請求書を見て初めて数千円から数万円の法外な国際通話料に気付くという被害が後を絶ちません。
【データ比較】通常通話と衛星電話着信の違い&主な不審プレフィックス
海外からの不審な電話を見分けるために、一般の国際通話と衛星電話、および近年多発している危険なプレフィックス(国番号・識別番号)の数値を整理しました。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| +870(インマルサット衛星電話) | 折り返し発信時:30秒ごとに約500円〜1,000円超(1分あたり1,000〜2,000円以上) | 国内通話:30秒あたり約22円 | 【極めて危険】一般生活で利用する必然性は皆無。折り返しは厳禁。 |
| 主要国の国際通話(+1 米国など) | 折り返し発信時:1分あたり約30円〜100円前後(キャリアプランによる) | 国際標準レート | 【要注意】なりすましや投資詐欺のガイダンス誘導に悪用される事例あり。 |
| アフリカ・島嶼国(+2xx / +67xなど) | 折り返し発信時:30秒あたり約150円〜300円(国・地域により高額化) | 中・高額レート | 【危険】ワン切り詐欺の常連国番号。心当たりがなければ即着信拒否。 |
| 着信を受けた側(受話のみ) | 国内での通話受信:0円(無料) | 発信者課金が原則 | 【安全】電話に出ただけで通話料を請求されることは法制度上あり得ない。 |
上記の通り、衛星電話への折り返し通話料金は一般的な国際電話の数十倍に達します。国内の通話定額プラン(「かけ放題」など)に加入していても、国際電話や衛星電話への発信は定額の対象外となるため、利用者が全額自己負担しなければなりません。

【実態検証】ネットの反応とドコモ等キャリアが鳴らす国際着信注意喚起
SNSやネット掲示板、Q&Aサイト上では、定期的に「+870」からの不審電話に関する投稿が急増します。実際にユーザーから寄せられた生の声と、通信キャリア各社の公式発表を照らし合わせると、詐欺グループの手口の傾向が浮き彫りになります。
ネット上のコミュニティでは、以下のような被害報告や困惑の声が数多く確認できます。
「夜中の2時に+870からワン切りがあった。海外通販のトラブルかと思って掛け直したら、英語の不気味なアナウンスが流れてすぐ切った。請求が怖い…」(X上の投稿より)
「朝起きたら見慣れない87から始まる番号。知恵袋で調べたら衛星電話の詐欺らしくてゾッとした。折り返さなくて本当に良かった」(質問掲示板より)
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクといった国内大手キャリア各社も、公式サイトや会員向けアプリを通じて定期的に「海外からの不審な着信に対する注意喚起」を繰り返し発出しています。ドコモの公式注意情報でも、「心当たりのない国際電話番号への折り返し発信を行わないよう強くお願いいたします」と名指しで警告されており、トラブルの相談窓口には毎月相当数の問い合わせが寄せられているのが現場の実態です。
さらに近年では、従来のワン切りだけでなく「自動音声で未納料金を騙る」「大手通信会社や警察を騙ってキーパッドの番号入力を促す」など、特殊詐欺(オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺)と組み合わせた複合型の手口へと悪質化が進んでいます。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
国際電話詐欺をめぐっては、インターネット上で事実とは異なる誤った噂や過度の恐怖を煽る情報が散見されます。無用な混乱を避けるためにも、客観的な事実に基づいた「誤解の是正」が必要です。
誤解1:「不審な電話に出てしまっただけで数万円請求される」というデマ
「着信に出て『もしもし』と言った瞬間に高額な通話料をだまし取られた」という投稿を見かけることがありますが、日本国内において電話を着信して受話器を取るだけで通話料金が発生することは通信規格および契約上ありません。日本の携帯電話ネットワークでは、海外からの着信であっても着信側に通話料が課されることはないため、誤って応答ボタンを押してしまったとしても、その場で切断すれば金銭的被害はゼロです(※海外ローミング中に着信した場合は例外的に着信料が発生します)。
誤解2:「すぐ切ればお金はかからない」という油断の罠
一方で、「折り返してしまっても、相手が出る前に1〜2秒で切れば大丈夫」と考えるのは非常に危険です。前述の通り、詐欺グループ側は「呼び出し音(プルルル音)」自体を録音データとして再生しているケースがあります。つまり、日本の発信者の耳にはまだ呼び出しているように聞こえていても、回線側はすでに接続状態(課金開始)になっているのです。数秒の接続であっても、最低課金単位(30秒〜1分)の高額な国際料金が即座にカウントされます。
【プロの結論】認知バイアスに付け入る詐欺心理と対象者別の防御基準
なぜ多くの人が「見覚えのない海外番号」に折り返してしまうのか。犯罪心理学の観点からは、人間の「損失回避バイアス」と「返答義務感」が巧妙に悪用されていると分析できます。「不在着信を放置すると、重要な商談を逃すのではないか」「遠方の身内に何か異変があったのではないか」という不安が冷静な判断力を奪い、無意識にリダイヤルボタンを押させてしまうのです。
被害を未然に防ぐため、自身の生活環境に応じた以下の明確な行動基準を持つことが推奨されます。
- 海外との個人的・業務的接点がない人:先頭に「+」が付く番号、あるいは「010」から始まる国際着信は100%無視・即座に着信拒否を徹底する。
- 海外取引や出張、海外在住の家族がいる人:連絡手段をあらかじめLINE、Slack、Teams、WhatsAppなどの暗号化メッセージアプリに限定・事前合意しておき、電話回線を使った突発的な海外着信には直接折り返さないルールを策定する。

【2026年最新対策】不審な国際電話への具体的な対処法と着信拒否設定のやり方
不審な国際電話から身を守るためには、個人の注意深さに頼るだけでなく、スマートフォンの機能や通信キャリアの防御サービスを活用した「二重の防壁」を築くことが極めて重要です。
1. スマートフォン本体による着信拒否設定
iPhone(iOS)の場合
- 特定番号の個別拒否:「電話」アプリの着信履歴から該当番号の右側にある「i」マークをタップし、画面最下部の「この発信者を着信拒否」を選択します。
- 連絡先未登録番号の一括消音:「設定」>「電話」>「不明な発信者を消音」をオンにします。連絡先に登録されていない番号からの着信音を自動で鳴らさず、直接留守番電話へ送る強力な防衛策です(※仕事等で初対面の番号を受ける機会が多い方は運用に注意してください)。
Android端末の場合
- 特定番号のブロック:「通話」アプリの履歴から不審な番号を長押しし、「ブロック/迷惑電話を報告」を選択します。
- 迷惑電話対策機能の有効化:「通話」アプリの設定メニューから「発信者番号と迷惑電話」を開き、「迷惑電話の疑いがある通話をスクリーニング(または警告表示)」をオンにします。Googleのデータベースと連携し、不審な番号を事前に画面上で警告してくれます。
2. キャリア提供の「国際電話発着信規制」を活用する(推奨)
海外との通話が一切不要な場合は、携帯電話キャリアが提供する「国際電話の発信・着信規制サービス」を申し込むのが最も根本的かつ安全な解決策です。
- NTTドコモ:「国際電話防犯対策」および「国際着信拒否」設定がマイドコモ(Web)またはお客様センターから無料で申し込み可能です。
- au(KDDI) / ソフトバンク:同様に「国際電話利用休止」や着信規制のオプションが用意されており、契約者マイページから即座にオン・オフの切り替えができます。
この設定を行っておけば、万が一誤って画面をタップしてしまっても海外への発信自体がネットワーク側で遮断されるため、高額請求事故を物理的に防ぐことができます。
【87 国 番号】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:+870からの着信に出てしまい、すぐ切りました。通話料金は発生しますか?
A1:日本国内で通常の携帯電話回線を使って受話した場合、着信した側に通話料金が請求されることは一切ありません。相手に名義や口座番号などの個人情報を口頭で伝えていない限り、通話料の観点での金銭的被害はありませんのでご安心ください。ただし「実在する有効な電話番号」として名簿業者に記録された可能性があるため、以後の不審な連絡にはより一層警戒が必要です。
Q2:うっかり折り返してしまい、数秒で切断しました。どう対処すべきですか?
A2:残念ながら、折り返して回線がつながってしまった場合は、数十秒程度の短い通話であっても数百円〜千円前後の国際通話料が発生している可能性が高いです。これを取り消すことは基本的にできません。被害を最小限に抑えるため、それ以上の発信は絶対にやめ、即座に該当番号を着信拒否に登録してください。次回の利用明細を確認し、数万円単位の身に覚えのない額が請求されている場合は、速やかに利用キャリアのサポート窓口や消費生活センター(局番なし188)へ相談してください。
Q3:海外の知人がインマルサット(+870)を使って電話をかけてくることはありますか?
A3:知人が遠洋漁業の船員、豪華客船のクルー、国際航路の航空機パイロット、あるいは砂漠地帯などを巡る学術調査隊・国際人道支援NGOのスタッフ等でない限り、民間人が日常生活でインマルサット衛星電話から一般家庭や個人のスマホへ発信することは極めて稀です。通常の大使館勤務や海外駐在員、一般旅行者からの連絡であれば、現地の一般携帯キャリア(現地の国番号)やインターネット通話アプリを通じて連絡が入るのが通例です。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
見慣れない「+87」や「+870」から始まる電話は、特定の国からではなく、高額な通信インフラであるインマルサット衛星電話を悪用した国際ワン切り詐欺の可能性が極めて高いのが実態です。詐欺グループは通信料金のキックバックを狙い、人間の心理的な隙を突いてコールバックさせようと手ぐすねを引いています。
身を守るための鉄則は極めてシンプルです。「見覚えのない国際番号には絶対に折り返さない」。この基本姿勢を徹底するとともに、海外通話の予定がない方はキャリアの無料ブロック設定やスマートフォンの迷惑電話対策機能を活用し、物理的にリスクを排除しておくことが賢明な判断といえます。 (出典: 87 国 番号(Yahoo!ニュース))